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東京高等裁判所 平成6年(行ケ)232号 判決 1996年3月29日

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

理由

【事実及び理由】

第一  当事者の求める裁判

一  原告

1 被告が、原告に対する公正取引委員会平成五年(判)第一号不当景品類及び不当表示防止法違反事件につき、平成六年九月二九日付けでした審決(以下「本件審決」という。)を取り消す。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

第二  事案の概要

一  本件審決に至る経緯

1(一) 原告は、肩書地に本店を置き、包装もち等の製造販売業を営むものであり、「杵つき生きり餅」と称する一キログラム入りの包装もち(以下「本件商品」という。)を昭和六二年九月から製造し、卸売業者等を通じて、主に関東、東海及び関西の地域の一般消費者に販売している。

(二) 原告は、本件商品の包装袋に「純もち米一〇〇パーセント使用」、「原材料名 水稲もち米」及び「本品は厳選したもち米が原料の『きねつき』による本格製法の生もちです。」と記載し、あたかも当該商品がもち米のみを原材料として製造されたもちであるかのような表示(以下「本件表示」という。)をしていた。

しかし、本件商品は、原材料として、もちとうもろこしでん粉(ワキシスターチ、もちとうもろこしを原材料としたでん粉をいう。)が約一五パーセントの割合で使用されていたものであり、もち米のみを原材料として製造されたものではない。

(三) 本件表示について、被告が調査を開始したところ、原告は、本件商品の原材料としてもちとうもろこしでん粉を使用することを取りやめており、平成四年五月ころ以降、原材料としてもちとうもろこしでん粉を使用した当該商品は販売されていない。

2 被告は、平成四年五月二一日、原告に対し聴聞を行った(以下「本件聴聞手続」という。)うえ、平成五年二月二五日、原告に、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)四条一号に違反する行為があるとして、同法六条一項に基づき、原告に対し、別紙のとおりの本件審決主文一ないし三と同旨の排除命令(以下「本件排除命令」という。)をした。

3 被告は、原告の請求により、審判手続を開始し、公正取引委員会平成五年(判)第一号不当景品類及び不当表示防止法違反事件として審判手続(以下「本件審判手続」という。)を進め、平成六年九月二九日、本件審決のとおり審決をした。

4 なお、以下、景品表示法六条一項前段所定の命令を「排除命令」といい、同法七条二項所定の審決における同法六条一項前段に規定する事項に係る命令を「排除措置」という。

二  原告は、本件審決につき、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)八二条一号、二号に該当する事由があるとして、本件審決の取消を求めている。

第三  争点

一  原告の主張

1(一) 原告は、本件聴聞手続において、被告が不利益的裁量処分をするに当たっては、原告に対し、景品表示法四条一号に規定する構成要件事実のほか、裁量権を行使するについて、原告に不利益に斟酌する事実についても告知し、弁解の機会を与えるべきである旨主張したが、被告は、この手続を踏むことなく、本件排除命令をしたものであり、本件排除命令には、景品表示法六条二項(平成五年法律第八九号による改正前のもの。以下同じ。)及び条理に反する重大な違法があり、原告は、本件審判手続において、右の違法を主張した。これに対し、本件審決は、不当景品類及び不当表示防止法に規定する聴聞に関する規則(平成六年九月三〇日改正前のもの。以下「聴聞規則」という。)一条三号にいう事案の要旨とは、景品表示法三条又は四条に定められた構成要件に該当する事実をいい、公正取引委員会は、右の聴聞手続に当たって被聴聞者に対し右の構成要件該当事実と法令の適用を告知すれば足りると解するのが相当であり、それ以上に不利益な情状及び証拠までも告知する必要があると解すべき理由はないとして、原告の主張を排斥しているが、右は景品表示法六条二項及び条理の解釈を誤った違法なものというべきである。

(二) 行政手続としての聴聞手続における瑕疵は審判手続における攻撃防御をもって治癒されるとすることはできない。審判手続は、公正取引委員会が主宰する糺問手続であり、被審人が、糺問する側の審査官側から、審査官側に不利益な主張や資料を引き出せるはずがなく、また、審判手続は、準司法手続としての事実上の第一審の役割を果たす手続でもあり、事実上弁論主義的に運用されるものであるから、被審人側の攻撃にも限界がある。さらに、聴聞手続(行政手続)で済む手続を争訟手続にまで持ち越すのは国民の側にとって負担が大きすぎ、国民に無理な負担を強いることになり、したがって、憲法三一条所定の適正手続の原則に照らすと、審判手続は、本来的に、聴聞手続における適正手続についての瑕疵の治癒を予定している制度であるとはいえない。

また、本件審判手続において、審査官側は、審査官側に不利益に斟酌される事情(被審人に有利な事情)については主張、立証しようとせず、行政庁に要求される告知義務を尽しておらず、本件聴聞手続における瑕疵は審判手続において治癒されたとは到底いえない。

被告は、原告に対し、構成要件に該当する事実のほかに、原告に不利益に斟酌される事情を、本件聴聞手続においても、本件審判手続においても告知しなければならなかったのに、これをしなかったものであり、本件聴聞手続の瑕疵は本件審判手続においても治癒されることはないというべきであるから、本件審判手続は違法であり、本件審決は取り消されるべきである。

2 景品表示法六条一項は、同法四条各号に違反する行為があるときは、当該違反事業者に対し、「その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができる。」と規定するにとどまり、右事項を命じるか、命じるとしていかなる措置をとるか等については、公正取引委員会の裁量に委ねているが、公正取引委員会としては、その裁量権を行使するに当たっては、それが恣意的に流れないようにするために、裁量基準を定立して、適正に運用すべき条理上の義務があるところ、本件審決は、景品表示法は、公正取引委員会に裁量権を与えており、公正取引委員会が排除命令をするについての裁量権行使の基準を定めないまま個々の事案ごとに事件処理をしたとしても違法ではなく、原告に裁量基準を示さなかったことにも違法はない旨説示しているが、右は、条理の解釈を誤った違法なものというべきである。

3 原告は、本件審判手続において、本件排除命令は裁量権を濫用し、その範囲を逸脱するものである旨を主張したが、右違法事由の存否についての主張・立証責任の分配については、<1>裁量権の濫用、その範囲逸脱を合理的に窺わせる具体的事実の摘示責任は原告にあり、<2>被告は、裁量権の合理的、適正かつ妥当な行使を基礎づける事実について主張・立証責任を負うものと解すべきであるとの見地から、被告の裁量権の濫用、その範囲逸脱を窺わせる事実として、

(一) 原告の代表取締役吉川昌利は、不当表示についての認識(故意)がなく、東京都及び埼玉県から事前の指導があったこと、改善の約束をしながら不当表示行為を継続反復していることも知らなかったが、被告から調査を受けた際、誘導されて右事実を認める虚偽の自白をしたところ、被告は、右のような虚偽の自白を考慮してはならないにもかかわらず、右自白に基づき、原告が、東京都及び埼玉県に対し不当表示行為の改善を約束する文書を提出しながら、その約束を履行せず、継続反復して不当表示行為を行ったと認定し、これを悪質な事情として考慮しているが、右は事実誤認に基づく他事考慮に該当する違法なものであること、

(二) 被告の原告に対する不当表示行為の調査は、原告の代表取締役の実兄である吉川義悦が被告に対してした申告を端緒として開始されたものであるが、同人は、本件表示行為を自ら行い、かつ、東京都及び埼玉県からの事前の指導に対し、改善を約束する旨の虚偽の回答、報告をした者であるから、右申告はいわゆる利用告発に当たり、動機が不正であるから、右利用告発に始まる本件につき排除命令をし又は排除措置を命じることは違法であること、

(三) 平成三年一一月ころから平成四年一一月ころまでもちとうもろこしでん粉混入の点で調査を受けたのは原告のみであったから、その後原告が排除命令を受けるのは平等原則に違背すること、

(四) 被告は、原告に対し、本件排除命令をしたほかに、もち粉を使用しているのに「もち米」と表示したこと及びきねでついていないのに「杵つき」と表示した非常にささいな表示と実体との乖離について警告を発しているにもかかわらず、表示と実体との乖離が著しいうるち米混入の点について、合理的根拠がないまま、警告すら発しないで不問に付したが、被告が、「もち米」、「杵つき」の表示について警告を発し、うるち米混入について不問に付したことは、その合理性と妥当性について多大な疑問があり、被告のこれらの措置は、被告の原告に対する本件排除命令が適正な裁量権の行使でないことを窺わせる重要な間接事実であること、

以上の事実を主張・立証した。

したがって、被告は、裁量基準を明示したうえで、裁量権の合理的かつ適正、妥当な行使を基礎づける事実を主張・立証すべきであったのに、これをしなかった。

しかるに、本件審決は、原告に被告の裁量権の濫用、その範囲逸脱の事実の立証責任があるという前提で、原告の主張を排斥しており、本件審決には、主張・立証責任の分配の法則に違背した違法がある。

さらに、本件審決は、被告が裁量権の適正な行使を基礎づける事実について主張・立証しなかったにもかかわらず、被告の裁量権の濫用、その範囲逸脱についての原告の主張を排斥しており、被告の裁量権の適正な行使を基礎づける事実については、これを立証する実質的証拠を欠くものというべきである。

4 本件審決は、原告が被告の裁量権の濫用、その範囲逸脱を窺わせるものとして主張した事実が存在しないと認定しているが、実質的証拠を欠き、また、理由不備の違法がある。

本件審決は、原告の代表取締役の故意について、「不当表示行為をその当時知らなかったと認めてよいかの点についても疑問を差し挟む余地がある」と認定しているものの、他の裁量権の濫用、その範囲逸脱を窺わせる事実(前記3(二)ないし(四)の事実)については、何ら実質的証拠を示さず、原告の主張を排斥し、あるいは、実質的証拠を示して事実認定するのを避けるため、その排斥する理由を実質的に何ら示さないで、これを主張自体失当として原告の主張を排斥しており、また、本件審決中には、右主張について「自らの不当表示行為のうちの本件排除命令において取り上げられていない点を取り出して論じようとするものであり、自ら被審人の悪性を主張することとなり」と説示する意味不明な部分があり、本件審決には理由不備の違法がある。

二  被告の主張

1 排除命令の手続にも、適正手続の要請があるが、被聴聞者は、景品表示法三条又は四条所定の構成要件に該当する事実と適用される法令の告知を受ければ、どのような事実に基づき、また、どのような法律の根拠に基づいて排除命令を受けようとしているのかを理解することができ、右告知を受けたときには、被聴聞者は、自らに有利であると考える事実と証拠を提出できることになるから、被聴聞者の防御権の行使は実質的に十分に保護される。聴聞規則一条三号にいう事案の要旨とは、同法三条又は四条所定の構成要件に該当する事実をいい、被告は、右の聴聞をしようとするときに、被聴聞者に対し右の構成要件該当事実と法令の適用を告知すれば足るものと解するのが相当である。この解釈は、最高裁判所の判例(最高裁昭和四九年四月二五日判決・民集二八巻三号四〇五頁)にそうものであって、原告の主張は理由がない。

2 公正取引委員会の法的性質、景品表示法の目的及び特質並びに排除措置を命ずる根拠規定等に照らすと、同法は、四条所定の不当表示について機動的、迅速に排除命令をし又は排除措置を命じるために、独占禁止法により特別に設置された独立行政委員会である公正取引委員会に広い裁量権を与えているものと解すべきである。さらに、行政手続法一二条一項においても、処分基準を設けることが努力義務にとどまるものとされているから、裁量基準を明示しなかったことは違法ではなく、本件審決に違法はない。

3 本件審決は、被告が本件排除命令をするに当たり裁量権を濫用したことを合理的に疑わせるに足る事実であるとして原告において主張する事実が、真にそのような事実であるか否かを検討したうえ、さらに、本件において排除命令を発することが裁量権の濫用に当たるものであるか否かを詳細に検討し、その結果、本件排除命令が裁量権の濫用に当たらない旨認定したものであって、本件審決中に主張・立証責任の所在を文言として明示しなかったからといって、本件審決に何らの違法はない。

4 本件審決は、挙示の証拠(審決案三七頁ないし四四頁記載の各証拠)に基づいて、本件表示に係る商品は原告の主力商品であるうえ、本件表示は不当表示の態様としても決して軽微な事案ではないこと、原告は、企業体として地方自治体から本件表示と同種の不当表示行為を改善するよう指導され、改善を約する書面を提出し、その経過は公正取引委員会に対して報告されていたこと、それにもかかわらず、原告は改善措置を講じないまま本件表示行為をするに至ったこと、公正取引委員会は、本件表示行為のされた時から遡る数年前に全国餅工業協同組合に対し、本件表示と同様の不当表示行為につき、表示の適正化を要望し、その事実を公表したこと、原告の代表取締役吉川昌利自身も、その際、公正取引委員会から、吉川食品株式会社の代表取締役としてではあるが、本件表示と同様の不当表示について調査、警告を受けた経験があったとの事実を認定しているのであって、右各事実は、これを立証する実質的証拠に欠ける旨の原告の主張は理由がない。

第四  当裁判所の判断

一  本件審決に至る経緯に係る事実は当事者間に争いがない。

二  原告の主張1について

1 原告は、本件聴聞手続及びこれに基づく本件排除命令には景品表示法六条二項及び条理に反する違法がある旨の原告の主張を排斥した本件審決には同法六条二項及び条理に反する違法がある旨主張する。

しかし、同法八条一項が、「排除命令に不服がある者は、」「公正取引委員会に対し、当該命令に係る行為について、審判手続の開始を請求することができる」と規定していることから明らかなとおり、審判手続の開始の請求は、当該排除命令に係る行為自体についてするものであり、右請求によって開始される審判手続における審判対象も右行為の存否等であって、当該排除命令の当否ではなく、右聴聞手続の瑕疵の存否は審判手続における審判対象となり得る余地はないものというべきである。したがって、聴聞手続及びこれに基づく排除命令に瑕疵があったとしても、それが、当然に、当該命令に係る行為について開始された審判手続に基づく審決の違法を来すものではないから、原告の前記主張を排斥した本件審決に違法はないというべきであり、また、審決の取消訴訟においては、聴聞手続及びこれに基づく排除命令の瑕疵は審決を取り消すべき事由となるものでもない。したがって、原告の右主張は採用することができない。

2 また、原告は、本件審判手続において、被告は景品表示法四条一号所定の構成要件に該当する事実のほかに、原告に不利益に斟酌される事情を告知すべきであったのにこれをしなかったものであり、本件審決は違法である旨主張する。しかし、審判開始決定書には事件の要旨を記載しなければならないとされ(独占禁止法五〇条一項)、審判手続は被審人に対してその謄本を送達することによって開始するものとされている(同条二項)ところ、右の手続は、適正手続の原則の要請に基づき、公正取引委員会が、被審人に対し、審判の対象としようとする違反事実を告知して防御の機会を与えるためのものであるから、景品表示法違反事件については、右の事件の要旨とは、同法三条の規定による制限若しくは禁止又は四条の規定に違反する行為の主体、違反行為の日時・場所、違反行為の内容・態様等の具体的事実と適用すべき法令を意味するものと解すべきであり、被審人に不利益な情状まで含むものではないというべきであるから、原告の右主張も採用することができない。

三  原告の主張2について

原告は、公正取引委員会が裁量権を行使するに当たっては裁量基準を定立し、右基準に基づいて個々の事件を処理すべき条理上の義務があると解すべきであるところ、本件審決は、右のような基準に基づくことなく本件排除措置を命じたのであるから、条理に反する違法なものである旨主張する。

ところで、景品表示法は、公正な競争を確保し、もって一般消費者の利益を保護することを目的として、不当な景品類及び表示による顧客の誘引行為を防止するため、独占禁止法の特例を定めるものであり(景品表示法一条)、同法が規制の対象とする不当な表示行為等は、独占禁止法により不当顧客誘引行為として規制されているが(同法二条九項三号)、ある事業者が実施すると、競争事業者がさらにそれを上回る規模と方法で対抗するという波及性と昴進性を有するものであるところから、景品表示法は、不当顧客誘引行為を効果的に規制するため、公正取引委員会が、右のような行為の態様に即して迅速かつ適切な処置をとることができるように、規制の対象となる「景品類」及び「表示」について、法律で画一的に定めるのではなく、公正取引委員会が指定することとした(同法二条)うえ、景品付販売については公正取引委員会が業界の実態に即して告示によって規制することとし(同法三条)、不当表示についても、法定禁止事項(同法四条一号、二号)以外に「一般消費者に誤認されるおそれがある表示」を公正取引委員会が指定によって禁止することができることとし(同条三号)、違反行為の排除を迅速に行うため、手続を簡略なものとして、公正取引委員会が、違反行為をしている者に対して聴聞を経て「その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができる。」とし(同法六条一項前段)、排除命令に不服がある者は、同法六条三項による公告があった日から三〇日以内に、公正取引委員会に対し、当該命令に係る行為について、審判手続の開始を請求することができ、公正取引委員会は右請求があったときは、遅滞なく、当該行為について審判手続を開始しなければならないと定めている(同法八条一項、二項)。

右のように、景品表示法は、その規制対象である不当な表示行為等が、複雑多様であって絶えず変化する企業活動に関わるものであるうえ、前示のような性質を有することに鑑み、同法の趣旨・目的を効果的に達成するために、公正取引委員会に対し、同法三条の規定による制限若しくは禁止又は四条の規定に違反する行為が認められる場合に、当該不当な表示行為等の実態に即応して、機動的、迅速に規制権限を行使することができるように、排除命令をし又は排除措置を命じるについても、また、いかなる内容の措置をとるか等についても、広範な裁量権を付与していることが明らかである。

そして、景品表示法は、五条所定の場合を除いて、公正取引委員会が右規制権限を行使するに当たって、準則又は裁量基準を予め定立し、これを規制対象事業者等に周知させることを求める規定を設けていないのであるから、同法四条一号の規定に違反する行為については、公正取引委員会は、規制権限を行使するに当たり、準則若しくは裁量基準を予め定立して、これに基づき排除命令をし若しくは排除措置を命ずるか又はこれらを定立しないで個々の事案ごとに右規制権限を行使するか若しくはいかなる内容の措置を講ずるか等をその裁量権に基づいて定めることができるものというべきである。

もっとも、同号の規定に違反する行為につき、公正取引委員会が排除命令又は審決において示した準則又は裁量基準が先例として確立し、これに基づく規制を受ける立場にある事業者も右先例に従っているような状態が継続していた場合に、公正取引委員会が、右先例を変更し、従前とは異なった内容の新たな準則又は裁量基準に基づいて規制権限を行使しようとするときであって、その結果が右先例に従っていた右事業者に不利益を課すことになるときには、右事業者に不意打的に不利益を課すことになるのを避けるため、準立法的機能・権限をも有する公正取引委員会としては、新たな準則又は裁量基準を定立し、これを右事業者に周知させる措置を講じたうえ、合理的な期間が経過した後にはじめて新たな準則又は裁量基準に基づく規制権限を行使するのが相当であるというべきであり、このようなときに、公正取引委員会が、右の措置を講ずることなく、前記先例に従って表示をしていた事業者に対し、新たな準則又は裁量基準に基づいて行政処分をするときには、当該行政処分は裁量権を濫用したものとして違法となる余地があるものというべきである。

本件において、景品表示法四条一号の規定に違反する行為につき、公正取引委員会が、規制権限を行使するに当たって、右のような措置を講ずべき事情のあったことについては、原告の主張・立証しないところであるのみでなく、本件記録上もかかる事情のないことは明らかであるから、公正取引委員会が同号の規定に違反する行為に対して規制権限を行使するについての準則又は裁量基準を定めることはこれを要しないものというべきである。したがって、被告が、本件審判手続において、右準則又は裁量基準を示さなかったことは、本件審決の違法を来す事由となるものではないから、原告の右主張は採用することができない。

四  原告の主張3について

原告は、本件審決には裁量権の濫用、その範囲逸脱を裏づける事実についての主張・立証責任の分配を誤った等の違法がある旨主張する。

1 排除命令に不服のある者の請求に基づいて開始された審判手続において、被審人は、排除措置を命じることが不当である理由を述べ、かつ、これを立証する資料を提出することができる(独占禁止法五二条一項)ところ、原告が本件審判手続においてした裁量権の濫用、その範囲逸脱を窺わせる事実に関する主張は、排除措置を命じることが不当である旨の主張と解される。

景品表示法は、四条一号の規定に違反する行為の存在が認められる場合に、排除措置を命じるか、命じるとしていかなる措置をとるか等については、公正取引委員会の裁量に委ねているものと解すべきであることは前記説示のとおりであり、右違反行為に係る審判手続において、公正取引委員会は、右違反行為の存在を主張・立証すれば足り、被審人が当該違反行為につき排除措置を命ずることは裁量権を濫用し又はその範囲を逸脱する違法なものである旨主張するときには、被審人は、単にその旨を主張するのみでは足りず、それを裏づける具体的事実の主張・立証責任を負うものと解すべきである。したがって、右と異なる見解の下に本件審決を論難する原告の主張は、既にこの点において理由がなく、採用することができないものというべきである。

また、本件審決は、右説示と同様な見解の下に、原告が本件排除命令に対し違法である理由として主張した、(一)事実誤認に基づく他事考慮であること、(二)動機が不正であること、(三)平等原則に違背すること、(四)うるち米混入について合理的根拠がないまま不問に付したこと、これら四つの事由について、後記五に認定するようにいずれもこれらの事由を認めることができないと説示しているのであるから、本件審決に理由不備の違法はないというべきである。

2 なお、原告は、本件審決が被告の裁量権の適正な行使を基礎づけるものとして認定している事実は、これを立証する実質的証拠を欠く旨主張するので、以下この点について検討することとする。

(一) 本件審決は、前記当事者間に争いのない事実、《証拠略》により、次の事実を認定している。

(1) 本件審判手続において審判の対象とされた本件表示の要旨は、原告が一般消費者に販売した包装もちは、もち米のみを原材料として製造されたものではなく、もちとうもろこしを原材料としたもちとうもろこしでん粉が約一五パーセント使用されているにもかかわらず、原告は、包装袋に「純もち米一〇〇%使用」などと、当該商品がもち米のみを原材料として製造されたもちであるかのように表示している、というものである。(前記争いのない事実)

(2) 国産もち米のみを原料として切りもちを製造する場合、原料の価格は、一キログラム当たり三六〇円ないし五〇〇円程度に達するが、もちとうもろこしでん粉は、もち米とは全く別の植物であるもちとうもろこしから製造されるもので、一キログラム当たり一五〇円程度である。

そして、原告においては、国産もち米のみを原料として製造した包装切りもちは一袋七〇〇グラム入りで五〇〇円で出荷しているが、原料として右のもちとうもろこしでん粉(約一五パーセントの割合)とタイ産もち粉(約八五パーセントの割合)とを使用した本件表示に係る包装切りもちは、タイ産もち粉が一キログラム当たり一七五円ないし一九〇円程度であることもあって、一袋一キログラム入りで二七〇円で出荷しており、両者の単位重量当たりの価格を比べれば二・六倍以上の開きがある。

(3) 原告が製造販売している切りもちのうち、本件表示に係るもちとうもろこしでん粉とタイ産もち粉とを原料とするものの売上総額は、年間約二億円に達し、原告の切りもちの全売上額のおおむね八割を占める。

なお、原告は、他に国産もち米のみを原料とする切りもち並びにもち粉、もちとうもろこしでん粉及び上新粉を原料とする切りもちを製造しているが、年間売上額は前者が約五〇〇万円で、後者は約四八〇〇万円にすぎない。

(4) 公正取引委員会は、昭和五八年ころ、包装もちの表示に関して調査したが、全国餅工業協同組合の組合員のうち九事業者が、実際には原材料としてもち米のほかもちとうもろこしでん粉等を使用しているにもかかわらず、あたかも当該もちがもち米のみを原材料としているかのように表示している事実が認められ、景品表示法四条一号の規定に違反する行為に該当するおそれがあると判断された。そこで、公正取引委員会は、これらの事業者に警告をする一方で、同年七月二二日付け書面で同協同組合に対し、それらの組合員に警告したことを知らせるとともに今後同様の行為が起きないように包装もちの表示について措置を講ずるように要望し、このことを公表した。

その際に公正取引委員会から調査、警告を受けた事業者の中に、原告の代表取締役である吉川昌利が当時代表取締役をしていた吉川食品株式会社が含まれていた。同社が製造販売していた生切りもちには、実際には原材料としてもち米のほかもちとうもろこしでん粉が使用されていたのに、同社はあたかも当該もちがもち米のみを原材料としているかのように表示しており、吉川昌利も、その事実を認める自筆の報告書を提出した。そこで、公正取引委員会は、同年七月二二日付け警告書により同社に対し、望ましい商品表示の方法を具体的に併記したうえ、同社の販売した切りもちの原材料の表示が同法四条一号に該当するおそれがあるから是正措置を講ずるように、また、今後このような表示を行わないように警告し、同人はこの警告書を受領した。

(5) 昭和六三年一二月ころに至り、東京都生活文化局消費者部適正表示課は、原告の営業所に電話連絡し、原告の会長として切りもちの製造実務、官公庁との対外的折衝等を任されていた原告の代表取締役の実兄吉川義悦に対し、原告の包装もちの品質表示を改善するように電話で指導し、さらに同年一二月二二日付け書面により原告に対し定められた様式の報告書で改善報告をするように求めた。

これに対し、原告において、代表者印の使用を許されていた吉川義悦が、右の様式に従い代表者印を使い平成元年一月一九日付けの代表者名義の回答書を作成し、同月八日以降の製造分については原料をもちとうもろこしでん粉を混入しないものに変更し、従来どおりの包装を用いて製造販売している、との報告をした。

この回答書は、平成二年四月までには、東京都生活文化局消費者部から公正取引委員会に対し報告された。

しかし、原告は、原料を右の回答書に記載されたように変更したことはなく、回答書を東京都に提出した後も従来の表示を改めたことはなかった。

(6) 原告は、その後平成二年六月に埼玉県県民部消費生活課から、原告の製造販売に係る切りもちの包装表示が景品表示法に違反するとの指摘を受けた。そこで、原告は、吉川義悦の指示の下、同月四日付けで、既に品質を改善しており、再びこのような違反行為をしないように注意する、との趣旨の前同様代表者印を押捺した代表者名義の報告書を作成して同課に提出した。その報告書は、同月七日に公正取引委員会に対し写しが送付されて報告された。しかし、原告は、この報告書に記載したように原告の製品の品質を改善することなく、本件表示行為をするに至った。

(7) 原告は、本件審判手続に先立って行われた聴聞手続においても、公正取引委員会が認定した事実すべてを認めた。

その上で、原告は、公正取引委員会の職権がどのような場合に発動されるかを尋ねたほかは、いわば情状に関する事実として、公正取引委員会の調査開始後原告が指摘を受けた行為を取りやめたこと、原告の代表取締役である吉川昌利は、原告が過去に東京都から行政指導を受けたことを知らなかったことなどを述べたにとどまった。

(二) 右のとおり、本件審決は、前記挙示の証拠により、当事者間に争いのない事実である前記(1)を除く前記(2)ないし(7)の各事実を認定しているところ、右証拠により右各事実を優に認定することができ、右認定の過程に経験則違背、不合理な点等の違法はないから、右各事実を立証する実質的証拠に欠けるところはないというべきである。

3 そして、右2(一)(1)ないし(7)の事実によれば、本件表示行為が景品表示法四条一号の規定に違反する行為に該当することは明らかであって、本件表示に係る商品は原告の主力商品であるうえ、本件表示は不当表示の態様としても決して軽微な事案ではないこと、原告は、企業体として地方自治体から本件表示と同様の不当表示行為を改善するよう指導され、改善を約する書面を提出し、その経過は公正取引委員会に報告されていたこと、それにもかかわらず、原告は改善措置を講じないまま本件表示に至ったこと、公正取引委員会は、本件表示から遡る数年前に業界団体に対し本件表示と同様の不当表示行為に関し表示の適正化を要望し、その事実を公表したこと、原告の代表取締役吉川昌利自身も、その際公正取引委員会から、別の企業の代表取締役としてではあるが、本件表示と同様の不当表示について調査、警告を受けた経験があることが明らかであり、本件表示は、それ自体被告が排除命令をし又は排除措置を命じるに値する行為であったうえ、改善の機会もあったのに改善しないままかなりの期間にわたり、相当量の商品に関して継続的に行われた行為であるなど、悪質といわれてもやむを得ない事情があり、調査開始後比較的早い段階で本件表示が取りやめられたことなど、原告のために酌むべき事情を考慮に入れても、被告が原告に対し、排除命令をし、本件審決によって排除措置を命じたことには裁量権の濫用又はその範囲逸脱の違法があるとはいえないというべきであるから、原告の前記主張も採用することができない。

五  原告の主張4について

原告は、被告の裁量権の濫用、その範囲逸脱を窺わせる事実として原告が主張した点についての本件審決の認定は、実質的証拠を欠き、理由不備の違法がある旨主張する。

景品表示法が、公正取引委員会に対し、同法四条一号の規定に違反する行為につき排除命令をし又は排除措置を命じるについて裁量権を与えていることは、前記のとおりであるから、右規定に違反する行為が認められる限り、当該行為について排除措置を命じることは原則として違法となるものではないが、当該排除措置を命じることが、右裁量権の濫用あるいはその範囲を逸脱してされたものであるときには、当該審決は違法として取消を免れないものというべきである。

そこで、原告が主張する本件審決についての違法事由の存否について、以下検討する。

1 事実誤認に基づく他事考慮であることについて

本件審決は、《証拠略》によっても、原告が不当表示を行い、また、東京都及び埼玉県から商品の表示について改善の指導を受け、改善するとの報告をし、そのことが公正取引委員会にも報告されたにもかかわらず、原告が改善しなかった事実が認定できるとしたうえ、《証拠略》によって、公正取引委員会が、昭和五八年ころ、包装もちの表示に関して調査し、全国餅工業協同組合の組合員のうち原告の代表取締役である吉川昌利が当時代表取締役をしていた吉川食品株式会社を含む九業者が、実際には原材料としてもち米のほかにとうもろこしでんぷん粉等を使用していたにもかかわらず、もち米のみを原材料としているかのように表示している事実を認定し、景品表示法四条一号の規定に違反する行為に該当するおそれがあったため、これらの業者に警告する一方で、同年七月二二日付け書面で同協同組合に対し、それらの組合員に警告したことを知らせるとともに、今後同様の行為が行われないように包装もちの表示について措置を講ずるように要望し、このことを公表したこと、その際、公正取引委員会から調査を受けた吉川食品株式会社の当時の代表取締役であった右吉川昌利が同社の製造販売する生切りもちには、原材料としてもち米のほかにもちとうもろこしでんぷん粉が使用されていたのに、当該もちがもち米のみを原材料として使用しているかのように表示していたことを認める報告書を提出し、公正取引委員会の警告書を受領したこと等の事実を認定したうえで、原告の代表取締役が企業代表者として不当表示をしないよう企業内を指導監督すべき義務を怠ったことは明らかであって、原告の代表取締役の本件表示についての認識の有無は原告の法人としての責任に影響がないとしたうえ、原告が企業体として地方自治体から同種行為について改善の指摘等を受け、改善を約束しながら改善しなかったことを被告が排除措置を命じる際に考慮したとしても、他事考慮には当たらないとの認定をしているものである。

本件審決挙示の前記証拠によると右事実を認定することができ、その認定の過程に経験則違背、不合理な点等の違法があるとはいえない。そして、景品表示法の目的が商品の不当表示から消費者を保護することにあることに鑑みると、法人の代表者の不当表示行為についての認識の有無は、当該法人に対し、排除命令をし又は排除措置を命じることの当否に影響のある事由とはいえないというべきであり、公正取引委員会が、一般的に警告を発した後に、原告が、地方自治体から改善命令を受け、これに応じる旨の回答をしながら、改善しないで不当表示を継続したことについて、たとえ原告の代表取締役にその認識がなかったとしても、原告に対し排除措置を命じたことには裁量権の濫用、その範囲逸脱の違法があるとはいえず、また、原告の不当表示行為や、東京都等からの事前の指導に対し改善の約束をしながら継続反復して不当表示行為をしていたことの認識についての原告の代表取締役の自白の有無及びその真偽は、右裁量権の濫用、その範囲逸脱の違法ついての判断を左右する事由ではないから、原告の右の点に係る主張も採用する余地がないものというべきである。

2 動機が不正であることについて

《証拠略》によっても、被告が吉川義悦の不正な動機に加担する目的で排除措置を命じるに至ったと認めることはできず、また、本件全証拠によっても、本件審決が他の不正な目的をもって原告に対し排除措置を命じたものとは認めることができないから、原告の右主張も採用することができないものというべきである。

3 平等原則違背について

景品表示法四条一号の規定に違反する同種・同様・同程度の行為をした事業者が多数ある場合に、公正取引委員会が、そのうちの少数の事業者を選別し、これらに対してのみ排除命令をし又は排除措置を命じるという法の選別的執行をしたときであっても、これによって、爾後、同号の規定に違反する行為を抑止する等の効果がありうるのであるから、公正取引委員会が、右違反行為をした事業者に対して一般的に規制権限を行使して行政処分をする意思を有している限り、そのうちの少数の事業者を選別してした前記行政処分をもって直ちに平等原則に違背する違法なものとはいえないものというべきである。そして、当該行政処分が右原則に違背する違法なものとなるのは、公正取引委員会が、右処分の相手方である事業者以外の違反行為をした事業者に対しては行政処分をする意思がなく、右処分の相手方である事業者に対してのみ、差別的意図をもって当該行政処分をしたような場合に限られるものと解すべきである。

原告の平等原則に係る主張は、公正取引委員会が、本件表示と同様の不当表示をした事業者に対し、規制権限を行使して排除命令をし又は排除措置を命じる意思がないにもかかわらず、原告に対してのみ差別的意図をもって本件排除措置を命じたものである旨の主張を伴うものでないから、右説示に照らし、主張自体失当として採用することができないものというべきである。

仮に、原告の主張を右説示のような主張を伴うものであると善解できるとしても、本件審決は、《証拠略》により、原告の代表取締役が、平成四年一月ころ、原告と他の事業者が製造販売する市販包装もちの表示と品質検査の結果を記載した書面を入手し、同年六月、公正取引委員会に対し提出したところ、公正取引委員会が、右書面に記載された株式会社宮城餅本舗、日本もち株式会社及び株式会社丸好の三社に対し、調査を経て、平成五年二月二五日、原告に対すると同様の排除命令をしたとの事実を認定したうえ、右事実から、原告が提出した書面が端緒となって、公正取引委員会が、原告以外の事業者に対しても調査を開始したうえ、原告に対すると同様の排除命令をしたことが窺われるから、原告に対してのみ差別的な意図をもって排除命令をしたものでないことは明らかであると認定しているものである。そして、本件審決挙示の右証拠によると右の事実を認定することができ、その認定の過程に経験則違背、不合理な点等の違法があるとはいえず、右事実によると、本件審決が原告に対してだけ差別的な意図をもって排除措置を命じたものでないことは明らかであるというべきであるから、原告の前記主張は採用することができない。

4 うるち米混入について合理的根拠がないまま不問に付したことについて

右の点についての原告の主張に対する本件審決の判断には、措辞に適切さを欠く部分があるが、本件審決は、要するに、景品表示法は、公正取引委員会が同法四条一号の規定に違反する行為について排除措置を命じるにつき、公正取引委員会に裁量権を与えているのであり、当該行為が右規定に照らすと、複数の不当表示から構成されていると評価できる場合に、そのうちどの部分につき排除命令をし又は排除措置を命じるかについても、公正取引委員会の裁量に委ねられているとして、原告の右主張を排斥していることが明らかである。

景品表示法が、その目的達成のために、公正取引委員会に対し広範な裁量権を付与していることは、前記三において説示したとおりであり、同法が公正取引委員会に右裁量権を付与した趣旨・目的に照らすと、被告が、本件審判手続において本件表示を審判の対象とし、これについて排除措置を命じたことには、うるち米混入の点を不問に付したとの原告の主張事実があったとしても、直ちに裁量権の濫用、その範囲逸脱の違法があるとはいえないというべきである。したがって、原告の右主張も採用することができない。

六  以上によると、本件審決には、原告主張の違法はないというべきであるから、原告の本訴請求はこれを棄却すべきである。

よって、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 柴田保幸 裁判官 鬼頭季郎 裁判官 伊藤紘基 裁判官 滝沢孝臣 裁判官 三村晶子)

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